2015年4月21日火曜日

グレイプフルウツ


 うちの鉢植えのグレープフルーツの木は、

 どんなに元気がないようにみえても、

 毎年この季節になると、必ず新芽を出す。





 
 生きてるよ、と。

 
 鉢の土はもうとっても硬いし、

 根っこはおそらく鉢いっぱいにぎゅうぎゅうで、

 そうとう苦しい状態だと思うのだけれど、

 植え替えをしようにも、鉢が重すぎて、

 スコップも上の方の土しかいじれず、

 なんとなくしかたなく

 この状態のまま何年も経ってしまっている。


 冬なんかもう、ベランダでひどく寂しげに、寒さにじっと耐えているようにみえる。

 葉っぱも元気がなく、ほとんど死んでいるかのよう。


 それでも暖かくなると、

 しーん、としていた彼(彼女)が急に、

 青々とした新芽を出し始めるのだ。

 ちゃあんと毎年。


 ほんとに愛おしい。

 そしてごめんね。

 そろそろ本気で、土を心地よい状態にしてあげたい。


 今日はすごく時間をかけて、

 一枚一枚の葉を拭いてやり、
 
 茎にいっぱいついちゃっている白い小さな虫を、見える限りぜんぶ取り除き、

 新芽の香りをかぎ、

 いつもありがとう、と心で話しかけた。


 黙ってずっとずっと、

 わたしのそばにいてくれてありがとう。


 わたしはたぶん彼(彼女)の存在に、

 気づかないときもずっと癒され続けている。


 今よりもっと若い頃に、ひとりで部屋で傷ついていたときも。

 けっこうやさぐれていた時期も。


 恋人ができても。

 結婚しても。

 こどもが生まれても。


 忙しくて水をあげ忘れても。

 土が硬くて居心地が悪くても。

 虫がついちゃっても。

 
 なにも言わないで、わたしのそばで静かに生きてくれている。


 わたしが18〜19才くらいのときに、食べ終わったあとの種を植えて、

 芽が出てからずっと。


最初の芽が出たところ


成長の様子を、付箋に書いて周りに貼ってある


 わあ

 もう23〜24年一緒にいることになる。


 実家の家族と暮らした年月よりも、夫と暮らしてきた年月よりも、ずっと長い。



 ありがたくて泣けてくる。


 大事にするね。

 ごめんねありがとう。